岡目八目
(4)打てば広がる人の輪と夢
(寄稿連載 2015/05/26読売新聞掲載)私が住む東北町に近い八戸市は、日本でも有数の碁が盛んな土地です。
日本棋院八戸支部の会員数は191人で全国4位。幸いなことにスポンサーも多く、各種のアマチュア大会が開催されています。私も参加大会にはこと欠かず、99歳になった今も、囲碁に対する意欲が衰えることはありません。囲碁のある人生が楽しくてしかたがないのです。
様々なイベントに参加する中で、最もうれしく、充実感を味わうのは、技を競うことを通じて多くの人と知り合い、理解し合うことができることでしょう。
たとえば以前、岐阜県の飛騨高山を訪ねたときのことです。碁会所に顔を出したところ、席亭さんに「どれくらい打つのか?」と聞かれました。7段か8段と答えたところ、「それはすごい。うちに7段という人は初めて来た」と驚かれ、地元の6段の人たちを呼び集めて歓迎してくださいました。ぶざまな碁を打つと青森の名折れですから、私も精いっぱい打ち、最後は皆さんと仲良くなったものです。
囲碁をやるだけで人間関係がどんどん広がる――。こんなに素晴らしいことはありません。ですから私は、今も夢がいっぱいなのです。
そして最近は、改めて人間の知恵の奥深さということも考えるようになりました。コンピューターがこれだけ発達した世の中になったのに、いまだ囲碁では人間にまったくかなわないのですから。
人間の頭、能力とは本当にすごいものですね。そんなことに感動しつつ、碁を打つ日々を送っています。
(青森県東北町在住、アマ8段)(おわり)