岡目八目

小川誠子さん

小川誠子さん

(1)目に優しいグリーン碁石

(寄稿連載 2009/02/09読売新聞掲載)

 ◇おがわ・ともこ

 作家の夏樹静子先生は大の囲碁ファン。グリーン碁石の発案者でもいらっしゃいます。グリーン碁石誕生についてはご存知の方も多いと思いますが、簡単に説明させて下さい。

 眼科医より「眼精疲労の為、白と黒は目に良くない。碁は休むように」と言われた夏樹先生。けれど囲碁はやめたくない。どうしよう、と考えた時、緑は目が休まる、それなら碁石を緑にしたらいいのでは? とひらめいたのです。普通ならあきらめてしまいそうな局面を打開する、何という粘りある一手でしょう。

 試行錯誤の末に、白石は淡いグリーン、黒は濃いグリーンと、きれいなガラスの碁石が出来上がったのです。今では年に一度、新緑が薫る5月にグリーン碁石大会が開かれ、今年で18年目を迎えます。私も審判長を務めさせて頂いていますが、森の中にいるかのようにさわやかな大会です。

 また、その後、日本棋院グリーン碁石支部も出来、夏樹先生は支部長として全国各地の支部との交流など、普及にもご尽力下さっています。

 当時、マスコミには囲碁への情熱から生まれた「碁石革命」と書かれていましたが、まさにその通りですね。目が疲れやすい方でもこの碁石があれば大丈夫。先生の素敵な好手に、乾杯です。

 私は若い頃から、夏樹先生の大ファン。柔らかで優しい雰囲気の一体どこから、様々なサスペンスの思考が生み出されるのか不思議です。先生からは棋士の頭の中も不思議と言われますが――。いつか、囲碁絡みのミステリーを書いて頂きたいと、ひそかに楽しみにしている私です。

(囲碁棋士六段)