棋聖戦
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岡目八目

読売新聞 2009/02/16掲載
小川誠子さん

(2)木谷先生の「存在」今も(寄稿連載)

 木谷門下生にとって、記念すべき年を迎えました。
 今年は、師の故・木谷實(みのる)九段の「生誕百年」にあたります。私は先生の晩年の弟子になりますが、たくさんの素晴らしい思い出が心に詰まっています。先生は寡黙でいらっしゃったので、ひと言一言に重みを感じさせ、聞き逃すまいと必死になったものです。
 たとえば、ある日の出来事。先生に、当日の道場での成績を尋ねられました。
 「2勝1敗です」と答えた私に、「一局目は?」と聞かれ、「一局目は負けましたが、あとは2連勝です」と勝ち越しを伝えました。「じゃあ、1敗2勝だね」と笑顔の先生。
その瞬間、トーナメント戦では、一局目を勝たないと、あとの2勝はないことに気付かされました。さりげなく、一局目の大切さ、気合を入れることを教えてくれたのです。このように、自分自身で考え悟るよう導いてくださるのです。ですから、いつも背中に先生の存在を感じていました。
 今、ご存知のように棋聖戦が争われている最中です。その第2局は、先生が28歳のとき、木谷道場を作られた神奈川県平塚市で行われました。私も兄弟子との鼎談(ていだん)のため、多くの門下生とともに伺いました。
 前夜祭の折、両対局者の「木谷先生が見ていると思うので、内容のよい碁を打ちたい」との言葉に、先生の存在が現在にもつながっていると、胸が熱くなりました。
 盟友・呉清源先生(94歳)も、検討に加わっていらっしゃいました。木谷先生の姿と重なり、呉先生のご健勝を願うとともに、門下生の一人として身が引き締まる思いがしました。
(囲碁棋士六段)
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