岡目八目

大橋拓文さん

大橋拓文さん

(1)人工知能 プロレベルに

(寄稿連載 / 2016.04.26読売新聞掲載)

 ◇おおはし・ひろふみ

 英グーグル・ディープマインド社が開発した人工知能「アルファ碁」と韓国の李世乭九段との対戦は、囲碁界を超えて大きな反響を巻き起こしました。様々なメディアで取り上げられ、ライブ中継は世界で延べ2億8000万人が視聴したといいます。

 ディープマインド社はこれに先立ち、科学雑誌「ネイチャー」に、欧州チャンピオンとの対局の詳細を公表しました。アルファ碁が5戦全勝の内容で、衝撃が走りました。しかし悪い手も多数見られ、李九段との対戦についての大方の予想は、李九段が圧倒的に有利というものでした。

 ただ一方で、ここ数年コンピューター囲碁に関心を持ってきた私は、李九段が敗れるかもしれない、と一抹の不安を感じていました。

 コンピューターの碁は、形勢がよいと判断すると、緩んでみたり、悪手を打ったりすることがあるのです。これを見て棋力を過小評価しがちとなるのですが、前提として正確無比な形勢判断と確率重視のシミュレーションがあり、自ら負けに行く手を打つわけではありません。

 欧州チャンピオンとの対局後、自己学習を繰り返し、半年間で棋力が大幅に向上しているという情報もありました。

 結果は、ご承知のようにアルファ碁の4勝1敗で、コンピューターの進化を見せつけました。

 コンピューター囲碁の開発が始まって、約45年がたちます。当初、38級とされ、長らく級位者レベルだった棋力は、ついにプロレベルに達しました。2000年代に入って起きた二つの大きな進化がこれを可能にしたのです。

(囲碁棋士六段)