岡目八目

大橋拓文さん

大橋拓文さん

(4)人工知能が示した可能性

(寄稿連載 2016/05/24読売新聞掲載)

 圧倒的な実力を見せたアルファ碁ですが、課題も見えました。第3局、李世乭(イセドル)九段がコウを仕掛けた際の対応には不可解なところがありました。これがヒントになり、第4局での李九段の妙手につながりました。

 アルファ碁の対応の誤りは、人工知能といえども完全ではないことを示しています。グーグルはこの技術を、自動運転や医療分野で活用することを目指しており、この手のミスをどう扱うかが今後の課題となるでしょう。

 囲碁界に話を戻しますと、アルファ碁の登場は、もはや人間は人工知能に勝てないのではないかという絶望感と、囲碁は人智(じんち)では計り知れない無限の可能性があるという期待感と、真逆のことを同時に示しました。もちろん私は後者でありたいと思います。

 この対戦の直後に、第9回UEC杯コンピュータ囲碁大会が東京の電気通信大学で開催されました。社会の関心が高まり、過去最多のソフトがエントリーし、多くのファンの皆さん、報道陣で会場は熱気に包まれました。

 Zen(日本)、フェイスブックチーム(米)をはじめ、フランス、韓国、台湾などから強豪が集いました。囲碁の人工知能研究は各国で進んでいます。優勝はZenでした。

 数千年にわたって打たれてきた囲碁は、最先端の科学をもってしても究明しきれない多様な世界があります。アルファ碁の登場を機に、私たち人類はその奥深い世界を見る第一歩を踏み出した、と思うべきでしょう。人工知能と人間が共生しつつ、更に囲碁が発展することを願います。

(囲碁棋士六段)(おわり)