岡目八目
(1)草の根 谷根千に広がる
(寄稿連載 2019/07/31読売新聞掲載)◇おおはし・のりあき
寺町・谷中、森鴎外、夏目漱石ら文豪の町・根津。千駄木と併せ「谷根千」と呼ばれるこの地域で子供たちに囲碁が広がっている。
きっかけは谷中小学校4年生だった私の長男・拓文(現プロ棋士六段)が、少年少女全国大会で準優勝したことだ。賞品として学校に奨励金が出、本間憲男教頭先生のお考えで囲碁セットを購入していただいた。
当時、谷中小学校に囲碁を教えられる先生が居なかったこともあり、私が世話役となった。PTA活動の一環として翌1995年2月から囲碁入門講座を4回行った。参加者は1年生から4年生まで24人だった。
評判は上々で、4月の新学期には囲碁教室の継続を望む声が多数あり、6月から第1、第3の土曜日、月2回行う運びとなった。そして1年後からは毎週1回実施することになる。
爾来(じらい)25年間続き、現在は谷中小、汐見小で、週3日行われている。その結果、2000年と翌年、2年連続で「少年少女囲碁大会」の東京大会において4人がベスト8に入賞し、3人が全国大会に出場した。
その後、「ヒカルの碁」ブームで一段と盛り上がり、現在も100人を超える子供たちが囲碁を学んでいて、今年の「小・中学校囲碁団体戦」には19チーム57人が参加した。過去15年の間に東京代表として、谷中、千駄木、汐見、根津、忍岡小が全国大会に出場した。
また今年の「東京23区対抗囲碁の会」では、教室の第1期生が台東区の主将を務め、6位入賞を果たした。小2で囲碁を始めた彼らが活躍する姿を目にし、感慨深いものがある。
ゼロからの出発で着実に地域の輪が広がっている。
(台東区囲碁連合会会長)