岡目八目
(3)豪快な担当記者…今は昔
(寄稿連載 2017/10/31読売新聞掲載)「有望な若手を遊びに誘うな」という、不文律が影響したのか、どうか。囲碁の担当者たちの気質も変わりました。
今の関西の担当者たちはみな紳士的です。囲碁・将棋の担当者(関西では兼務が多い)の集まる会合が年に2回あります。宿泊施設を借りて、棋士たちも参加し、今でも私はOBとして出席します。報告などの会議を経て、食事を取るのが一連の流れ。そこでは和やかに棋界の話題についての会話をして、日付が変わるころ、おとなしく床に就く。
かつては違いました。酒に専念する者。飲みながら碁やマージャンなどに興じる者。大半の参加者が朝まで一緒に過ごしていました。時には酒の勢いも手伝って議論が白熱し、もめごとに発展することも。幹事となると大変でした。
そんな先輩方を見ていると、碁の強い弱いに関係なく、ある種の威厳といいますか、迫力がありました。酒の席に誘われ、朝までの付き合いになるとわかっていても、断り切れない。盤上のシノギが得意な棋士が、酒席では簡単にツブされてしまう。そんな悲惨な光景を何度か目撃しました。私自身も酔い潰れ、吐く息を気にしながら仕事に向かうこともありました。
ルール程度しか碁を知らなかった私も、そんな付き合いの中で、棋士たちから認められたような気がします。「まだ若いのに、たいしたもんや」と言われたことも。褒められたのか、あきれられたのか、いまだにわかりませんが……。
今も昔も担当者が仕事に熱心なのは変わりありません。ただふと懐かしくなる時があります。豪快だった先輩たちの姿が。
(囲碁ライター)