岡目八目
(1)スペインで見た欧州の囲碁熱
(寄稿連載 2014/02/04読売新聞掲載)◇おおさわ・なるみ
1月7日~14日、スペインで行われた第38期棋聖戦七番勝負、井山裕太棋聖と挑戦者、山下敬吾九段の第1局に記録係として同行しました。対局会場はマドリード郊外の学園都市、アルカラ・デ・エナーレス市の国営ホテル「パラドール」。17世紀の修道院を近代的なホテルに改装した施設です。歴史的な部分はそのまま保たれており、すてきなホテルでした。
対局室は石造りの建物で、重厚な雰囲気でした=写真、中央が筆者=。お二人も気持ちよく対局できたのではないでしょうか。その対局を間近にみて感じたのは創造力、そして何かを生み出す意欲です。私も頑張る力をもらいました。
対局と同時に欧州棋聖戦も行われ、欧州各地から約150人の囲碁ファンが出場。こちらも熱気があふれ、欧州の囲碁人気の高さを肌で感じることができました。
海外で囲碁の魅力が受け入れられ、ファンが増えていることは、昨年、文化庁の文化交流使として北米、南米を訪れた時にも感じたことです。海外での普及は何度か経験がありますが、2か月という長丁場は初めての経験でした。
出発前、交流使の先輩である円田秀樹九段から「まず、自分が楽しむことが大切。そうでないと相手に囲碁の魅力、楽しさは伝わらない」とアドバイスをいただきました。互いにリラックスして意思を通わせあうという貴重な意見でした。
3月14日、米ニューヨークに向けて飛び立ちました。
(囲碁棋士四段)