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岡目八目

読売新聞 2006/10/23掲載
柳時熏さん

(2)「李昌鎬」が韓国に与えた自信(寄稿連載)

 昨今の国際棋戦の結果がはっきりと示しているように、現在の世界最強国は韓国である。主要棋戦のほとんどが韓国勢の独り舞台と言っても過言ではなく、富士通杯に至ってはなんと9連覇中という独壇場。
 なぜ韓国がこうまで強くなったのかといえば、それは一にも二にも「李昌鎬(イチャンホ)の存在」があったからこそである。国内棋戦で「13冠王」という不滅の大記録を打ち立て、さらに国際棋戦でも結果を出し続けた彼がいたからこそ、周りの棋士もつられてレベルアップを図ることができたのだ。
 よく陸上競技などで、何十年も破られなかった記録を誰か1人が更新すると、立て続けに10人ぐらいが続くことがある。つまり人間というのは、知らず知らずのうちに自分自身で勝手に限界を設定しているもので、たまたま誰かがその限界を越えるのを見たりすると、途端に「なんだ、あいつができるなら俺(おれ)だって」となるのである。
 10年ちょっと前の韓国碁界がまさにこれで、「ずっと世界の碁をリードしてきた日本にはかなわない」と、勝手に限界を作っていたのが、李昌鎬という不世出のスーパースターが現れたことで、「俺たちだって日本に勝てるじゃないか」となったのである。
 勝負事というのは、勘違いでも何でもいいので、「自分は強い」と思い込んだ者の勝ちである。現在の韓国棋士は日本の棋士と対戦している時、途中まで形勢が悪くても、「最後には自分が勝つ」と思って打っている。この自信、もしくは勘違いこそが、現在の韓国棋士の最大の強みであろう。
 話を李昌鎬に戻すが、世界の頂点に君臨し続けて、はや10年以上。これだけのながきにわたって勝ち続けているというのは、通常では考えられない大偉業で、もはや称賛の言葉が見つからない。年齢は彼が4歳下なのだが、そんなことは関係なく、僕は彼を心の底から尊敬している。次回は、ここ数年で猛烈に韓国を追い上げている中国について触れてみたい。
(囲碁棋士九段)
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