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岡目八目

読売新聞 2006/11/06掲載
柳時熏さん

(4)追い抜かれた“マイペース日本”(寄稿連載)

 日本はなぜ勝てなくなってしまったのか?ファンの皆さんが僕たち専門家に対して、最も尋ねたい質問がこれであろう。今や国際棋戦で日本選手が1人でもベスト8に残れば拍手が起きたり、「よくやった」と言われる時代だから、かつての日本一強時代を知っているファンからすれば、「一体どうなっているんだ」と歯がみしたくなる気持ちは当然だと思う。
 結論から言えば「日本は勝てなくなったが、弱くなったわけではない」。これまで触れてきたように、韓国や中国が強くなったのである。
 自動車に例をとれば、日本は昔からずっと50キロの速度で走り続けてきて、それで世界トップの地位にあった。その後じんを拝していた韓国や中国は「このままではいけない」と考え、この20―30年間、100キロ以上の猛スピードで爆走してきた結果、日本を追い抜いたのである。
 日本は勝てなくなったが、日本の碁のレベル自体が落ちたわけではない。昔も今も、変わらず50キロのペースで走り続けてはいるのだ。その「ペースが変わらない」というところが、今の日本碁界が抱えている問題点ではあるのだが、そう考えないとますますネガティブになってしまう。韓国や中国がそうだったように、何事もポジティブに考えなければ。
 さて、4回にわたって日本・韓国・中国に関する話を偉そうに書いてはきたが、当人である僕自身が国際棋戦はおろか、日本の国内棋戦でも結果を出せていないのは、本当に情けない限り。現在の自分に関して言えば、これはもう不満に決まっている。
 ただ、自分より強いかもしれないと思える人は世界に何人かいるが、「自分よりはっきり強いと思える人はいない」というのもまた事実。数年来考えていた「自分に何が足りないのか」という問題についても、今はそれなりの答えが見つかりつつあるので、近いうちにいい結果が出せるはずだと思っている。
(囲碁棋士九段)
(おわり)
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