岡目八目
(1)碁を通じ友人の輪広がる
(寄稿連載 2017/6/27読売新聞掲載)◇すぎと・だいさく
碁を覚えたのは中学に入ってからで、まだ戦後間もない時です。休日になると、父と祖父や叔父たちがよく碁を打っていました。三味線・減らず口・ジョークを飛ばしながら、賑やかで楽しそうです。私は横から眺めながら「門前の小僧」で、すぐにルールを覚えましたが、対局は高校生になってからでした。
私に碁を教えてくれる先輩が現れ、「碁経衆妙」という古典的な詰碁の本を貰いました。私は陸上競技の部活動と勉強の合間に、先輩の指導を受け、難問の読み解きをしていたら、いつの間にか力が付いていました。そこで初めて三段の父と初段の祖父、1級くらいの叔父と対局したら、いい勝負でした。
子や孫が同じ趣味を持ち、強くなるのはとても嬉しいようです。口々に「天才だ。頭がいい」などと言って小遣いをたくさんくれるのです。私は調子に乗って大学に入ってから毎年、日本棋院の昇段囲碁大会に出て、卒業時には免状四段・碁会所六段になりました。 官僚になってからは忙しく、碁を打つ時間は少なくなったのですが、霞が関の代表として、プロの先生に夕刊紙や囲碁誌掲載の指導碁を打っていただいたりしました。
一昔前までは碁を打つ人が多く、知人・友人が大勢できました。医師だけでも内科・外科・歯科、そして偉いお坊さんまで親しい友人がいます。皆さんは何かのときに助けてくれるので、とてもありがたいです。また詰碁の本が一冊あれば、長時間の乗り物でも退屈しません。
私は碁を覚えたお陰で、とてもすてきな人生を送っています。
(日本水道工業団体連合会名誉顧問)