岡目八目
(1)古碁 小6で学び始める
(寄稿連載 2017/03/07読売新聞掲載)◇たかぎ・しょういち
江戸から明治、大正あたりの「古碁」を学び始めたのは、1955年に小学6年生で院生になった頃からでしょうか。囲碁を覚えたのが小学5年生と遅かったので、今のアマチュア四段ぐらいだったと思います。
その頃は、古碁を並べるのが勉強の中心でした。今のように棋譜のコピーが簡単に手に入る時代ではないですから、同時代の碁は新聞に載っている棋譜を切り抜いていました。
藤沢秀行、坂田栄男、高川格、木谷実、呉清源……ともちろん一通り並べていましたが、いろいろな碁が載るので、一人の碁を集中して研究する感じにならない。その点、全集は一人の碁がまとまって掲載されているのが良かったんです。
師匠(中川新之七段)から、本因坊秀甫の全集をもらいました。並べなさいと言われたことはなかったけれど、それで勉強しなさいということだったと思います。あと、当時は『秀栄全集』がなかなか手に入らなかった。神田の古本屋街に3回ぐらい通って、全4冊を4000円で買いました。当時、記録係をすると1日1000円ぐらいもらえたので、それを何回もやった記憶があります。
福井正明九段が『道策全集』を持っていて、それを借りて書き写させてもらったこともありました。昔の対局は持ち時間が長かったから、記録係をしながら写したこともあります。一手一手書いていくから、並べるのと同じぐらい勉強になるんです。
でも若いときに、どこまで内容が理解できていたのかは、よくわかりません。プロ入りが近づいてきて、少しずつ古碁の奥深さがわかるようになってきました。
(囲碁棋士九段)