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岡目八目

読売新聞 2009/09/01掲載
高尾紳路さん

(1)小3で秀行先生の門下に(寄稿連載)

 ◇たかお・しんじ
 藤沢秀行先生が亡くなる前日、対局を終え病院へ駆けつけました。奥様始め親戚(しんせき)の方と明け方6時近くまで容体を見守り、近くのホテルへ向かうと間もなく、亡くなられたとの連絡がありました。臨終に立ち会えなかったのは心残りでしたが、きっと先生は「弟子の前で死ねるか」ということだったのでしょう。
 ベッドの横に座り「先生のような碁に少しでも近づけますように」との願いを込めて、右手をしっかりと握りました。
 そのとき、人差し指の長さが小指と同じくらいであることに初めて気付いたのです。これは、長い間の先生の勉強の証しであり、改めて感銘を受けました。
 先生からは囲碁、人生、そのほか多くのことを教えていただきました。
 初めて先生にお目にかかったのは、小学3年で入門したときでした。先生は酔っぱらっていました。
 私の両親はほとんど酒を飲みませんし、それまで酔っぱらいを見たことがありませんでした。何か違う人間に会ったようで、正直いって恐ろしいという印象でした。
 入門する前は、同じ千葉市にお住まいのアマ強豪、田岡敬一さんに教わっていました。田岡さんは、三村智保九段、森田道博九段を育て、秀行先生のもとへ送り出した方です。私も両先輩と同じ道をたどり、ごく自然に秀行門下になりました。
 先生のお宅は神奈川県川崎で、自宅から片道2時間半はかかります。そこで先生の提案で、棋譜を送り、電話で講評をうかがうことになりましたが、これが大変な修業でした。
(囲碁棋士九段)
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