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岡目八目

読売新聞 2009/09/29掲載
高尾紳路さん

(4)「人間の幅を広く」の教訓

 ◇たかお・しんじ
 「碁は人間が打つのだから、人間の幅を広くしなければいけない」と、藤沢秀行先生からいつも言われました。
 あるとき「今、どんな本を読んでるか」と尋ねられ、「読んでいません」と答えてひどくしかられたことがあります。以来、「これを読め、あれも読め」と本をたくさん頂きました。
 その中で、宮城谷昌光氏の「太公望」などが特に心に残っています。恵まれない境遇から修業を積んで大成した中国古代の人物を描いたもので、先生はこのような本を通じて、「しっかり修業をしろ」と、おっしゃったのでしょう。
 「人間の幅」といえば、書もその一つです。20歳くらいのとき、突然、「きょうから習字を習え」と、書家の柳田泰山先生を紹介されました。秀行先生の書は豪放磊落(らいらく)で、見ているだけで力を授かる気がします。
 「好きなように、思いどおりに書け。手本なんてどうだっていい」と、奔放な字を書かれる先生らしい言葉でした。
 先生には多くのことを教えられ、感謝の気持ちでいっぱいですが、私がもっと強くなることが一番の供養であり、恩返しと思っています。
 最後に、先生の詩集の一編「碁打ち秀行」を紹介し、結びとさせて頂きます。
『今回はもうこれで、さっさと終わりにして 早く生まれ変わりたいねえ 生まれ変わったら、また碁打ちになる 今度は失敗しない ほら、 いっぱいやっちゃったからねえ 生まれ変わったら、もっとマシな棋士になる もっともっといい碁を打つ 必ず、 そうする さあ、そろそろ次に行こう』
(囲碁棋士九段)
(おわり)
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