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岡目八目

読売新聞 2009/09/15掲載
高尾紳路さん

(3)多くを学んだ「秀行合宿」

 ◇たかお・しんじ
 藤沢秀行先生といえば「秀行合宿」が有名です。私はほぼ20年間、毎年参加し、兄弟子の森田道博さんと一、二を争うくらい出席率が良かったと思います。
 小学生の頃のことです。たまたま先生のお酒が抜けているとき、「坊主、一局教えてやろう」と、指導を受ける幸運が3回ほどありました。
 4〜5子の手合いで、終盤に入ると「俺は計算が面倒だから」と若手に目算させ、「先生○目ほど足りません」の合図で投了されました。素面(しらふ)のときの先生は優しくて、必ず負けてくださいました。
 講評は、かつて「異常感覚」といわれたイメージとはまったく違っていました。「こういう状況では、このように戦うものだ」「石はこう動かなくてはならん」などと、理路整然としていました。
 十代前半は、先生の講評を聞くだけで強くなった気がし、合宿が終わる頃は、迷いなく打てるようになったと思います。
 ところが、夜、ひとたびお酒が入ると閉口します。講評がいつの間にか演説になり、延々深夜まで。言っていることはいつもほぼ同じで、正座の足がしびれてたまりませんでした。これも今はよき思い出で、合宿で得たものは大きかったです。
 また、秀行先生といえばギャンブルで、突然、「競馬やるんだってなぁ」と電話があり、何回となく競馬場にお供しました。私は棋譜持参です。そこで「この手はどうかな」「この打ち方は」など講評が始まりますが、最後は「お前、そんなことも分からんのか。考えておけ。俺はパドックへ行く」と、いつも叱(しか)られました。
(囲碁棋士九段)
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