岡目八目

竹本健治さん

竹本健治さん

(4)佐賀で充実の囲碁ライフ

(寄稿連載 2018/07/18読売新聞掲載)

 さて、大学からずっと東京暮らしだった僕だが、4年前にカミさんの郷里である佐賀県武雄市に転居した。仕事はメールさえあれば全国どこででもできるが、問題は当地の囲碁状況だ。

 ところが豈図らんや、いろいろあたってみると、すぐ近隣の地区に熱心な囲碁会もあり、また武雄市街には佐賀県の県代表の常連である橋口正さん以下の高レベルの囲碁会もあって、むしろ東京以上に充実した囲碁ライフが送れるようになったのは嬉しい誤算だった。

 日本棋院佐賀中央支部では全国のアマ棋戦の県大会のほか、九州や佐賀県独自の棋戦もあわせて、ほぼ月1回のペースで行なわれていて、それらには極力参加するようにしている。

 佐賀県の碁界の弱点は他県に比べて層が薄いことで、逆に言えば、だからこそ僕のようなレベルでもけっこう県大会の上位に食いこめるのだが(実際、県代表にも一度なれた)、最近はあちこちで子どもたちへの囲碁普及が盛んで、県大会の顔ぶれにもどんどん若い人たちがふえてきたのが心強い。

 ただ、東京を離れたことによって、曲がりなりにも僕が幹事長を務める推理作家協会囲碁同好会に関して、密な対応や手取り足取りの指導から遠のき、裏幹事長である新井素子さんに一方的に負担をかけてしまっているのは申し訳ないし、心残りである。

 というわけで、せめて年数回の上京時にはと、ほかにもあちこち顔を出し、囲碁三昧で数日間過ごすのが恒例行事になっている。みっちりのスケジュールなので疲弊するけどね。

(作家) (おわり)