岡目八目
(1)アプリ 利用者増に苦心
(寄稿連載 2017/08/22読売新聞掲載)◇たなせ・やすし
「囲碁クエスト」という名前をご存じでしょうか。スマートフォンなどで使える無料の囲碁アプリ(ソフト)で、9路、13路、19路の対局を楽しむことができます。2014年にサービスを始めてから、徐々に利用者が増え、今では1日に約2万人が起動するほどになりました。
私はもともと将棋ファンで、中学校の頃から学校で友達と楽しんでいました。大学の時には友人と将棋ソフトを作るようになりました。大学院の時に開発したソフトで世界コンピュータ将棋選手権でも優勝し、その後も将棋ソフトの開発を続けていました。
囲碁に興味を持ったのは、碁会所の席亭のように、対戦を組むプログラムを作ろうと考えたことがきっかけでした。色々なゲームで使えるような“AI席亭”を作ってみて、将棋より先に9路盤のアプリを出してみたのです。当時は囲碁のアプリはあまりなかったので、ひょっとしたら流行るのではないかと思いました。
ところが、最初の半年ぐらいは、囲碁クエストのことはほとんど知られておらず、対局場はほぼ無人でした。流行っているアプリは利用者が増えていくのですが、利用者が少ないとレビューでも酷評され、足が遠のく悪循環。ゲーム会社であれば広告を打つこともできますが、個人ではそうもいきません。利用者に申し訳ないので、初心者の私が相手を買って出ることもしばしば。何百局も対戦するうちに、自然に碁を覚えた気がします。
半年ぐらいたったころ、急に利用者が増え始めました。学生の強豪たちが使うようになって、そのクチコミで評判になったのです。
(プログラマー)