岡目八目

棚瀬寧さん

棚瀬寧さん

(4)狭い盤から始めよう

(寄稿連載 2017/09/12読売新聞掲載)

 将棋では、自分では指さずに観戦を楽しむ「観(み)る将」と呼ばれるファンが増えています。私も観戦するのはもっぱら将棋です。

 ただ、囲碁は「観る碁」というファンはそれほど多くないと思います。観戦して楽しむのにある程度棋力がいる気がします。全局が関連していて、序盤からの蓄積を積み上げていくゲームなので、途中から見るのは難しいですし、目が離せない。“ながら視聴”には向かないかもしれません。

 私自身は9路盤や13路盤がもっと普及すると、囲碁は流行(はや)るのではないかと思っています。友人に囲碁を勧める時にも、1局打ち終えるのに時間がかかる19路盤は、“重い”と感じることがあります。観戦する時にも、狭い盤は勝負所がどこなのか、焦点が絞りやすい。囲碁クエストは今年から19路盤での対局も取り入れましたが、中心は9路盤、13路盤です。このアプリを通じて、面白さを発見していただければと思います。

 囲碁クエストが流行ってから、知り合いも増えました。コミュニティーが盛んなのも、囲碁の特徴。囲碁クエストの縁で、ジャズミュージシャンの友人たちがやっている囲碁会などにも参加するようになりました。アプリではなく実際に碁盤で打つ時も、私が楽しんでいるのは、9路盤や13路盤です。囲碁は本当に奥が深く、すっかりはまってしまいました。

 9路盤や13路盤のファンが増えれば、19路盤で対局する人もきっと増える。将棋に負けないように、もっとファンを増やしたい――。一介のアマチュアではありますが、僭越ながらそんなことを考えています。

(フリーライター)(おわり)