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岡目八目

読売新聞 2007/10/22掲載
谷岡一郎さん

(3)「頭脳スポーツ」遇する社会に(寄稿連載)

 囲碁が2010年の中国・広州におけるアジア競技大会の、正式競技となる可能性が濃厚だとのこと。すでに前回の06年の大会でチェスが正式種目となり、各国代表がメダルを争ったことは記憶に新しい。とは言え、囲碁をスポーツだと考えることに違和感を覚える人もおられよう。これらチェスや囲碁のように体力をあまり必要とせず、脳みそのヨミの力が重要な競技を我々は「頭脳スポーツ」と呼んでいる。
 囲碁熱の高いお隣中国や韓国では、囲碁は正式のスポーツ種目として認定を受けており、他のスポーツ同様、国家の方針により強化策が打ち出されている。また、一般企業などのスポンサーも少なくない。ちなみに来年、オリンピック終了後の10月初めより北京で囲碁、チェス、ブリッジなどの競技会も開催される。何百年も文化として保護されてきた日本の囲碁界が、他国に後れをとっている現状には、少々不満である。
 囲碁や将棋のトップ・プロは「知のチャンピオン」とも呼ぶべき人である。私の心のヒーローである。しかるにどちらかと言えば筋力の方が重要なプロ・スポーツ(野球、相撲、サッカー、ゴルフ、テニス、競馬などなど)と比べ、あまりに待遇(つまり年収)が低いと思う。むろん頭脳スポーツも体力の必要なスポーツも、どちらも好きだし重要であるし、頑張って日本にメダルを持ち帰ってほしい。しかし、知のチャンピオンを厚遇しない社会は、衰退する一方になることを為政者たちに気づいてほしいのだ。
 手前みそであるが、私が学長を務める大阪商業大学では、従来のスポーツ推薦に加え、「頭脳スポーツ推薦」による入試制度がある。これは囲碁や将棋のプロ育成を目的としているのではなく、インストラクターや指導者を養成するためのもの。日本に知的カルチャーの種をまきたいと考えてのことだ。他のプロスポーツ同様、いやそれ以上に、知への憧(あこが)れが高い社会となっていてほしいのだ。
(大阪商業大学学長)
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