岡目八目

アンティ・トルマネンさん

アンティ・トルマネンさん

(1)フィンランド出身 昨年プロに

(寄稿連載 2016/06/28読売新聞掲載)

 ◇アンティ・トルマネン
 昨年12月、日本棋院の院生を経てプロ棋士として採用されました。フィンランド出身、27歳です。欧米出身者が棋士になるのは18年ぶりとのこと。大好きな囲碁を職業にできる喜びを感じています。

 初めての公式対局は今年5月でした。テレビ早碁棋戦の予選で、大木啓司先生(七段)が相手でした。碁盤を前にして頭の中が空っぽになり、大きなミスをして、その瞬間に負けにしてしまいました。雰囲気にのまれていたことにも気づいていませんでした。まだまだこれからですが、早く1勝をあげたいと思っています。

 私が囲碁に出会ったのは2002年、小学6年のときでした。英語版「ヒカルの碁」をインターネットで見つけ、読み出したのです。「ボードゲームの漫画なんて面白くないだろう」という予想は大はずれ。夢中になり、見よう見まねでネット対局も始めました。間もなく私の街に囲碁クラブがあることを知り、すぐに通うようになりました。

 フィンランドの囲碁ファンは首都ヘルシンキに集まります。私が住む中央部の都市、オウル市の囲碁クラブのメンバーは20人ほど。2年ほどで互角の相手はいなくなり、ヘルシンキに遠征するようになりました。

 2004年の国内大会で4位、翌年は欧州ユース選手権で5位、世界ユース選手権でも5位。どんどん強くなる気がして、ますます囲碁にのめり込みました。

 2007年、欧州選手権に出場したとき、小林千寿先生(五段)にお会いし、「いい集中力ですね」と言っていただきました。まだ弱く、ほかにほめるところがなかったのでしょう。

(囲碁棋士初段)