岡目八目
(3)正棋士目指し大事な時
(寄稿連載 2016/07/12読売新聞掲載)私が日本で囲碁棋士を目指したいと言うと、両親は応援してくれました。父の兄はスキージャンプの選手で、1980年に開催されたレークプラシッド五輪の90メートル級ジャンプ金メダリストです。両親は堅い仕事ですが、伯父の生き方を見ていて、「どんなジャンルでもいいんじゃないか」という考えを持ちやすかったのだと思います。
2014年に大学を卒業して日本に戻り、4月から院生に復帰しました。心配していた住まいは、小林千寿先生に紹介してもらいました。
院生時代は囲碁の勉強はもちろんですが、日本語の勉強も進めました。今、漢字は700ぐらい読めます。新聞はまだ読むのに苦労しますが、囲碁の記事ならたいてい分かるようになりました。
そして昨年、プロ試験で勝ち越し、「外国籍特別採用棋士」となりました。両親は喜んでくれましたし、フィンランドの地元のニュースでも紹介されました。帰国すると「面白い職業ですね」と声をかけられることもあります。
これからが大事で一番大変なときだと思っています。18年ぶりの欧米出身棋士として、どこまで強いのか、何ができるのかということが注目されています。しっかりしなければいけません。プロと言っても「特別採用棋士」です。三段になったら「正棋士」とされます。ですから今はまだステップの段階。まだまだ囲碁の勉強をがんばらなければいけません。
日本の生活は、近くを走る鉄道の音が気になりますが、食べ物もおいしく、囲碁に集中できる環境です。納豆も大好きになりました。
(囲碁棋士初段)