岡目八目
(2)日本へ囲碁留学し院生に
(寄稿連載 2016/07/05読売新聞掲載)私の父は建築家で、母は小学校の教師です。小さい頃は父と同じ建築家になりたいと思っていましたが、中学の頃に迷いが出て、それからは進路を決められずにいました。
2008年に大学に入りました。囲碁はずっと続けていました。模様の碁が好きなので、武宮正樹先生の棋譜を並べ、大学生になってからは藤沢秀行先生の棋譜をよく並べました。大学1年でフィンランド選手権戦で優勝し、翌年、世界アマチュア選手権戦の静岡大会に出場しました。初めての来日。「人が多い、道が狭い、建物が高い」というのが第一印象。神社やお寺も回り、文化に興味を持ちました。
その後、大会で友人になった中国人が、欧米人を対象にした囲碁の合宿に誘ってくれて、北京に1か月半滞在しました。プロに習うのは初めてで、テクニックや考え方を学び、盤面の見方がまるで違うことに驚かされました。帰国後、あっという間に強くなった実感がありました。棋力も6段となり、欧州トップ30に。さらに強くなるためには、欧州にいてはだめかもしれないと感じ始めました。
フィンランドでは大学時代に留学することが多く、私も興味がありました。「囲碁留学で日本に行こう」と決めるのに時間はかかりませんでした。小林千寿先生に弟子入りし、院生にしていただけることになり、11年10月から半年間、院生生活を送りました。いったん帰国して大学に戻りましたが、気持ちは囲碁に向かっていきました。大学の勉強より囲碁の方が面白い。その思いは募り、「早く卒業して日本に戻ろう」と考えるようになっていました。
(囲碁棋士初段)