岡目八目

内久根孝一さん

内久根孝一さん

(1)退職金はたいて碁会所経営

(寄稿連載 / 2011.05.31読売新聞掲載)

 ◇うちくね・こういち

 「いずみ囲碁ジャパン」は東京駅八重洲口にある碁会所です。ここを会場に開催している「全日本社会人囲碁団体戦」は今年、三回目を迎えました。「今、なぜ社会人大会なのか」を語る前に、「いずみ囲碁ジャパン」の立ち上げの経緯を紹介しましょう。

 私の囲碁歴は七十年。弱い6段。世の高段レベルには及ばぬものの、「碁キチ」レベルは上を行くかもしれません。

 一九九二年ごろ、日本列島碁会所縦断作戦を考えました。日本中を碁会所だらけにしたら、単に愉快なだけでなく、普及にも絶大な効果を発揮するのではないかと夢想したのです。

 当時、私は住友生命のビル管理会社の経営にあたっており、ビルは約四百棟。バブル崩壊序曲の頃で、ビルに空室が出始めた。これを全部、碁会所で埋めたらどうか。仕事、趣味の一石両当たりの妙手ではないか。そこで東京を起点に、金沢、仙台、京都――と、次々に着手していきました。ビル管理と称して、一生懸命、碁会所づくりに励んでいたのです。

 好事魔多し。景気悪化も極みとなり、本社から「全店閉鎖せよ」との指令が下った。サラリーマンの哀(かな)しさで、指令は絶対。せめてもの抵抗で、退職金をはたいて「八重洲」の経営権を買い取った。それが現在の「いずみ囲碁ジャパン」です。毎日、百から二百人の来客があり、私設の碁会所としては日本でも最大規模と言ってよいかもしれません。

 だが、単に規模が大きいというだけでは意味がない。せっかくなら碁界にメッセージを発信できるものにしたいではないか。「ジャパン」としたのは、その願いなのです。

(いずみ囲碁ジャパン社長)