岡目八目
(4)碁界発展には「改革と創造」
(寄稿連載 2012/12/11読売新聞掲載)拙書「浮世絵に映える囲碁文化」(日本評論社)をもとに、囲碁と浮世絵の歴史を振り返ってきましたが、相互に刺激し合い学び合うものがあったように思われます。
浮世絵の歴史の一面は、「粛清と文化」のせめぎ合いとみることができます。寛政の改革、天保の改革など時の幕府が倹約、綱紀粛正の名のもとに出版統制をもくろみ、錦絵、役者絵の禁止など激しい攻撃をかけましたが、これに対抗する形で、「水滸伝」の豪傑シリーズや風景画への新展開などを進めた歌川国芳ら絵師の心意気は特筆されなければなりません。さらに注目すべきは、そのせめぎ合いを導火線として、浮世絵発展のための技術革新と構造改革を果敢に展開していることです。加えて浮世絵、歌舞伎、浄瑠璃が相互に連携しながら、庶民の心情と思いを迅速に収集し、次の展開に活用していることです。
これらの取り組みは、現在、財政、採算面で厳しい状況下にある碁界にとっても、大いに見習うべき教訓を含んでいるように思います。
碁界では今、まいた種がようやく芽を吹き出そうとしています。その一つは、囲碁が、東大、早大、慶応義塾大、青山学院大などで教養教科として、また小学校などで情操教育課程として導入されつつあることです。もうひとつは、女性のファンが拡大しつつあることです。これらの芽を大事に育てていくことが、未来の碁界を発展させる礎になります。
囲碁文化は、永遠に限りなく続きます。だからこそ、常に「改革と創造」の理念をしっかりと心に刻んでおく必要があると思います。
(棋道懇談会会員)(おわり)