上達の指南
(1)相手の横腹へツケ一発
(寄稿連載 2015/12/01読売新聞掲載) 年間2000局近くの棋譜に目を通します。まだまだ勉学中の身ですから、できるだけ多くの棋譜を並べ、何かを得たいと思うのです。僕の思考を超えた手に出会うと、心の底から感動します。今年、目を見開かせてくれたそうした手を紹介したいと思います。プロしか理解できない難しい手ではなく、アマの皆さんも一緒にうなっていただける手を選んでみました。今回は研究会仲間でもある余正麒七段が放った華麗な手筋です。
【テーマ図】 白1と横腹へのツケ一発。これぞ手筋で、左辺の白の一団をしのいでいます。
【1図】 黒1の遮断なら、白2の切りが素晴らしい後続手段。黒3と抱える一手ですから、そこで白4から6と当て込みます。AとBが見合いで、白は大いばりでしのいでいます。
【2図】 黒1の受けでも、やはり白2の切りが巧手。黒3に白4、6で脱出です。
【3図】 白1から3、5としても脱出できますが、左辺白の姿はまだ頼りなく、この一団が攻められることで、左下△にも悪影響が及びそうです。
【4図】 実戦、河野九段は黒1の飛びでした。白2に黒3から白6を換わってから黒7と切り、白16まで。左辺の白はまだ攻めをうかがわれていますが、左下が大幅に強化された点で3図に勝ります。
テーマ図、白1のツケをかなり早い段階から見据えて打ち進めていたところが、余君の強さの証明です。
●メモ● 許家元(きょ・かげん)三段は台湾出身。17歳。高林拓二六段門下。2013年入段、15年三段。読みの速さと正確さが持ち味で、めきめきと頭角を現し、今年、棋聖戦Cリーグ優勝、新人王獲得、全日本早碁オープン戦準優勝と大活躍。余七段や一力遼七段とともに若手昇り竜の一角を占める。
第63期 王座戦本戦
白 七段 余正麒
黒 九段 河野臨