上達の指南
(3)中国 恐るべき読みの深さ
(寄稿連載 2015/12/15読売新聞掲載) 10月行われた国際団体戦、農心辛ラーメン杯世界最強戦で、日本の先鋒(せんぽう)として出場した一力遼七段が3連勝しました。日本勢としては久々の朗報で、僕も大きな刺激をもらいました。
とはいえ、現在は中国の圧倒的な強さが際立っています。その要因は読みの力がずば抜けていることです。彼らの棋譜を並べているだけでも、「こんなに先まで見通せているのか」と、底知れない強さを痛感せずにはいられません。
そうした中国棋士の読みの深さが表れた象徴的な一手をご覧いただきましょう。
【テーマ図】 黒の柯さんは18歳ながら、中国ランキング1位。範さんは急速に成長している若手です。黒1の割り込みが、勝利を決定づける一手でした。
【1図】 白1なら黒2とつぎます。白3の抜きが省けないので、黒4のケイマで封鎖し右下の白を捕獲できます。
【2図】 従って、実戦は白1からの当てでしたが、黒2から白7までを換わってから、やはり黒8のケイマ。白9に黒10、12と強引に封鎖しました。
【3図】 白1、3で頭を出されましたが、結局は黒12で再封鎖。この後は攻め合いとなりましたが、すでに柯さんは攻め合い勝ちを読みきっています。
驚くべきは、テーマ図より十数手前に右下で戦いが始まった時点で、この攻め合い勝ちを見越していた気配があることです。恐るべき読みの深さです。
●メモ● テーマ図の十数手前に3図以降の攻め合いが読めているとの許三段の見立てとは。「テーマ図の前、黒は右下白を攻めに行きました。この時点で中央白との絡みを見通しています。つまり黒1が見えていたのです。そして黒1を打つからには、その後の攻め合いは想定内ということです」
第11期無錫威孚房開杯決勝
白 四段 範蘊若
黒 九段 柯潔