上達の指南
(4)御城碁で無敗の19連勝
(寄稿連載 2013/01/29読売新聞掲載) 本因坊秀策は文久2年(1862年)、江戸にコレラがはやったときに罹患(りかん)し、33歳で亡くなりました。短い棋士人生の中、御城碁で無敗の19連勝という金字塔を打ち立てました。御城碁は家元四家(本因坊、安井、井上、林)が一門の名誉をかけて戦う最高の舞台で、毎年11月17日に江戸城で行われました。
【局面図】 御城碁18連勝目の対局。白番で、攻めの妙技を見せてくれます。
黒5、白8と互いに締まり合って、黒9の開きに向かったのは、理にかなった打ち方です。黒11は次に13のカケと12のハサミを見合いにした現代的な感覚です。黒81まで、白は上辺で利を得て優勢ですが、黒も右下一帯に勢力を張っており、油断はできない状況です。
【実戦図】 白の狙いは左辺黒の攻めをにらみつつ、右下一帯の大模様を消すことです。
ひとまず白1以下5まで周到な準備工作をして白7、9と攻勢を掛けます。黒は10、12と打たざるを得ず、白13まで先手で連絡し、15から無理なく荒らして優勢を確立しました。
【参考図1】 直接白1から3と攻めるのは妙味がありません。黒8に続いて白9と消すしかなく、黒12と攻められ苦しくなります。
【参考図2】 参考図1の白9で、1と肩ツキから消しに行くのも、黒2から4と大きく攻められピンチに陥ります。
(おわり)
●メモ● 林七段は三つの研究会に属している。最も力の入るのが師匠の林海峰名誉天元宅での「林研」。参加者は張栩棋聖、河野臨九段など強豪が多い。月2回の例会の連絡係や、半年かけて行うリーグ戦の表作りなど幹事役を務めている。「みんな熱心ですし、大変勉強になります」
本因坊秀策
先番 林門入
(文久元年=1861年)