上達の指南

林子淵七段の「ウワ手のいやがる簡明策」

(1)ツケノビで根拠盤石に

(寄稿連載 2011/08/23読売新聞掲載)

 置碁では弱い石、すなわち攻撃目標となる石を作らないことです。自分が攻められなければ、自然と攻めるチャンスが生まれてくるものです。シタ手は置石の分だけ先行しているのですから、慌てることはありません。簡明に手厚く打たれるのが、ウワ手にとっては最もいやなものです。

 【テーマ図】 4子局。白7まではよく見られる進行です。ここで私のお勧め簡明策の第一歩は、黒8と高くはさむ手です。

 【1図】 置碁の教科書では、黒1のハサミから3と飛び、白4に黒5が普通と書かれています。これで悪くはないですが、白6のスベリが嫌味。黒7と受け、白14まで根拠が不安定になるケースをよく見かけます。

 【2図】 黒1のノゾキから、3、5とツケノビを決めるのが簡明策です。白6とつけて紛れを求めれば、黒7の押さえから9のカケツギで隅は盤石です。白Aには黒Bで眼形の心配は全くありません。

 【3図】 2図の黒9で、うっかり黒1につぐと、白2のスベリから4にぶつかられ、根拠が心配になってきます。黒1でAのカケツギは堅すぎ、白B、黒Cを利かされてつらいです。

 【4図】 2図の白6で、白1と伸び、3とのぞくのも紛れを求めるウワ手の戦略として考えられます。これには黒4、6の切り下がりが簡明です。白9まで決めればAの断点は心配なく、黒10以下16までの強行手段が成立します。白Aには黒Bで、どちらかの白が取れます。

●メモ● 林七段は1978年6月、台湾出身。12歳で来日、張栩棋聖と共に林海峰名誉天元のもとで学んだ。95年入段、07年七段。今年5月、碁聖戦で挑戦者決定戦に進出したが、羽根直樹九段に敗れ、惜しくも7大タイトル初挑戦を逸した。昨年の成績は22勝10敗。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】