上達の指南

林子淵七段の「ウワ手のいやがる簡明策」

(4)カケから模様対決制する

(寄稿連載 2011/09/13読売新聞掲載)

 模様の張り合いになると、シタ手は白の模様にばかり気を奪われ冷静さを失いがちです。そこで焼き餅が出て、自ら苦しくすることが多いです。
 最終回は3子局における模様の碁の簡明策です。

 【テーマ図】 黒2、6と両辺の星に構えるのは立派な打ち方で、自然と模様の張り合いになってきます。白7に黒8は武宮流のコスミで、置碁でも模様の碁では有力です。
 白9と構えたとき黒から有力な模様対策があります。

 【1図】 黒1のカケから3に伸びます。こうなると白ははうほかなく、白10までは一本道。
 一見すると白に確定地を与えて惜しいような気もしますが、黒の築いた厚みは白の実利を数段上回るでしょう。続いて黒11と守って模様を引き締めるのがよく、この模様対決は文句なしに黒が優位です。
 黒1以下を惜しんで単に11に守るのは、白Aのケイマが絶好で白模様も広がりを見せます。また、白2でBと三々に変化すれば、黒Cと押さえて模様が強化されます。

 【2図】 黒1の打ち込みは焼き餅で、当然、白2と反撃されます。黒3のハネから5の飛びに、白6以下12と突破されては黒模様が消え、しかも上辺の黒3子がお荷物となり失敗です。

 【3図】 黒1とかかるのも焼き餅。白2のコスミツケから8と一方的に攻められ、これもまた黒模様が自然に消えていきます。
(おわり)

●メモ● 林七段は8月上旬、宮崎龍太郎六段、久保秀夫六段、武宮陽光五段らと、囲碁ボランティアで大震災被災地の福島市を訪れた。2日間で30局以上の指導碁を打った。「被災された方々と碁を通じてよい交流ができました。機会があれば、また出向きたい」

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】