上達の指南
(3)あえて白に地を囲わせる
(寄稿連載 2011/09/06読売新聞掲載) 置碁では、あえて白に地を囲わせるのも有力です。囲わされると地の大きさが限定されるので、ウワ手としては嫌なもの。
一方、シタ手にとっては、地を与えた代償に厚みが得られるわけで、それだけ局面が簡明になります。
【テーマ図】 3子局で私がよく用いるのが、白1の高目から3のカカリ。白9までが想定されます。ここで黒に有力な簡明策があり、白は大変困るのです。
【1図】 「馬の顔」の黒1が、この局面での簡明策ナンバーワンです。
白は2と受けざるを得ず、黒3、5と惜しまず押していい。白6までウワ手は地を囲ったのではなく、囲わされたのです。次いで黒7と大場に向かって、黒のペースです。
【2図】 「囲わされるのはたまらない」と、1図の白2を手抜きし、ほかの大場に向かうと、黒1のケイマがよくなります。白は2と三々に入るくらいで、黒3以下白8となり、左上隅の白の厚みが寂しくなってきます。
また、後に黒A以下白Dまで利かされるのもつらいです。
【3図】 普通は白模様が気になって黒1などの荒らしでしょう。しかし白2、4と飛ばれると下辺も忙しくなり、黒5の受けに白6のボウシを見舞われ、白14まで混迷してきます。
【4図】 なお、1図の黒1を怠ると、白1の飛びが好点。黒2に白3と広げられると白模様の谷が深く、ウワ手のペースになってきます。
●メモ● 林七段は毎週月曜、自宅で柳時熏九段、林漢傑七段らと「なんちゃってヨセ研究会」を行っている。発足当初のメンバーがヨセを苦手としており、「ヨセ研」だけではおこがましいと、「なんちゃって」をつけた。「細かい碁で秒読みになっても、慌てなくなりました」