上達の指南

マイケル・レドモンド九段の「短手数定石その後」

(2)人気のツケ引き 残る狙い

(寄稿連載 2013/08/27読売新聞掲載)

 短手数の定石といっても軽視してはいけません。まだ周辺に空白が多いため、次の狙いや後始末に重要な要素が多く残っているのです。

 【テーマ図】 白6の一間高ガカリに黒7、9のツケ引きから白12まで、プロの対局でも多く打たれている人気定石です。ほとんど紛れることがなく、アマチュアの方でも打ちやすい定石でしょう。
 黒13の詰めが狙いを持った手で、この後に知っておかねばならないことが多々あるのです。

 【1図】 よくあるのが、白の手抜きに黒1の打ち込みです。白2に黒3以下白14まで。白地は大分減りましたが、ほかに一手打っているので、部分的には互角の分かれとされています。
 白14が肝要な一手で、逆に黒14とかけられると、全体の白の眼形が怪しくなります。

 【2図】 白1に押して抵抗するのは乱暴で、黒2の押さえが強手です。
 白3に黒4以下8で白は壊滅状態となり、碁は終わりも同然です。

 【3図】 ▲の詰めに白1と飛んで備えれば、一応穏やかに見えますが、これでも黒2から4のノゾキまで利かすのが、黒の楽しみとして残っています。

 【4図】 黒1とのぞく奇襲も強力な手段で、知っておかなければなりません。
 白2のツギには黒3、5から7と軽妙に飛ばれ、白は裂かれ形になって事件です。白2ではAと下から受けて辛抱するくらいです。

●メモ● レドモンド九段は今年4月、日本棋院の派遣で、初めて英国のブリティッシュ・碁・コングレスに参加した。20年ほどの歴史のある大会。100人近い参加者の中で、10歳に満たない有望少年がいた。10級前後で早打ちながら、自分の打った碁を並べ返せるなど素質十分の子だった、という。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】