上達の指南

マイケル・レドモンド九段の「短手数定石その後」

(3)両ガカリに潜む怖い狙い

(寄稿連載 2013/09/03読売新聞掲載)

 手数の長い難しい定石を一生懸命覚えても、中身を十分理解していないと、「相手が定石どおり打ってこなくて……」の嘆き節になりかねません。
 それよりも短手数の定石、そしてその後を確実に覚えることが得策なのです。

 【テーマ図】 左上隅、白16の一間バサミに黒17の両ガカリはよく打たれます。白18のツケ以下黒23までの下がりは見慣れた進行です。

 【1図】 白1と伸びるのが手厚く、また怖い狙いを持った手です。これに対し黒は2と受けるのが本手で、白3と締まって左辺一帯が満足いく形です。

 【2図】 単に白1と締まると、黒2の下がりから4の当てを利かされるのが、ちょっとつらい。
 しかも後に白Aとハネ出すと、黒B以下黒Fと二段にはねられうまくいきません。
 黒4の当て一本が働いているのです。

 【3図】 △の狙いは、黒1などと手を抜くと、白2のハネ出しから8、10と粘り、14まで生きては白大もうけです。
 黒1と先着した効果など吹き飛んでいます。

 【4図】 白のハネ出しに、黒1と押さえる方が被害は少ないかもしれませんが、白4の切りが入ると黒5とつぐほかなく、黒は薄い形です。
 白Aのカケ、Bの飛び、Cに迫る手などが利いていて、黒Dと戻らされてはつらいでしょう。白6となっては早くも優勢と言っていいかもしれません。

●メモ● レドモンド九段は子供の頃からの読書好き。来日したあたりは英語の本を置く書店が少なく、また高価であった。そこで大枝門下の弟子たちが買ってくる漫画本を読んだ。漢字にルビがふってあり、お陰で日本語の本が読めるように。藤沢秀行名誉棋聖の勧めもあり、時代小説もよく読む。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】