上達の指南

秋山次郎九段の「勝負所の決断」

(1)先手で補強し天王山へ

(寄稿連載 2018/02/06読売新聞掲載)

 形勢が動くのはだいたい中盤です。局面が緊迫して勝負所を迎えますから、一気に主導権を握るチャンスも訪れます。うかうかしていると、逆に非勢に陥る可能性もありますから、油断はできません。

 私の実戦から、局面をがらっと変える機敏な発想をご覧にいれたいと思います。

 【テーマ図】これは私の白番です。下辺の黒に対して△と上から圧力を掛けたところです。黒はこのままにはしておけませんから、なにか手を入れることになるでしょう。

 【参考図】私の予想では、黒1とこすんで治まるくらいだろうと思っていました。それなら白2と飛んで右辺で主導権を握ることができます。△の一手が右辺の攻防にプラスになっていますから、白に不満はありません。ところが志田さんは、こちらの思い通りには受けてくれませんでした。

 【実戦図】黒1から3と利かしに来たのが機敏でした。下辺の黒を先手で補強して、天王山の好点、黒5のカケに回る作戦です。黒1、3と内側から決めるのは白を厚くして部分的にはつらい手ですから、私は気がつきませんでした。さすがの好判断だったと思います。

 こんなことなら、△では白3とより厳しく迫るのでした。黒Aと受けるでしょうから、白Bの飛びに回れました。△は白3にあるよりいいと思ったのですが、利いてくれないのではしょうがない。自分の甘さを痛感したものでした。

●メモ● 秋山次郎九段は、東京都出身。1977年11月23日生まれ。92年入段、2012年九段。03年NEC俊英トーナメント優勝、13年天元戦挑戦者、棋聖リーグ入りなど各棋戦で活躍。本格派で碁盤全体を大きく使う明るい碁と評判。不惑の年を迎えて、よりいっそうの活躍が期待される。

第42期棋聖戦Bリーグ1組
 先番 七段 志田達哉
 白番 九段 秋山次郎

【テーマ図】
【参考図】
【実戦図】