上達の指南
(4)大きく攻めて主導権
(寄稿連載 2018/02/27読売新聞掲載)攻めに回ったら徹底的にいじめたい。一気に優勢を築くチャンスを逃してはいけません。攻める前には、他で地を譲るなど少なからぬ犠牲を払っている場合が多いですから、簡単に妥協しては、地合いで間に合わなくなる可能性があります。
【テーマ図】私の白番です。中央で攻勢に立っています。そのかわり、周囲の黒地が多いですから、相当な成果を上げたいところです。
淡路さんは黒1のカドからかわしに来ました。白2のコスミは急所です。黒3と押して、▲の2子は捨ててもいいという判断です。白としては2子を取って満足するか、まだまだ攻め続けるか、ここが分岐点です。
【参考図】白1とかければ▲2子は取れます。カナメの石ではありますが、このくらいでは不十分なのです。黒2のハネから4、6と上辺に展開されるといい模様を作られます。黒地が多く、ここから挽回するのは難しいでしょう。
【実戦図】白1のハネが渾身(こんしん)の一手でした。ここを止めなければ攻めの効果は上がりません。黒2の飛びに白3のノビも利かします。ここまで決めてから、白5に戻るのがいい手順です。▲の2子を制しながら、中央の黒を大きく攻めれば主導権を握れるはずです。
ところがここからしくじって苦しい碁にしてしまいました。勝つには勝ちましたが、反省も多い一局でした。
一気に局面を変える思い切った手を取り上げて来ました。実戦でいい図が浮かんだら、迷わず決断しましょう。
(おわり)
●メモ● 地方などでアマチュアの大会に呼ばれて、解説や指導碁をすることも多く、囲碁ファンとの交流を楽しみにしている。強くなるコツをよく聞かれるのだが、「詰碁が一番効果がある」と答えると、反応がよくないという。「解けば解くだけ強くなるのだが、苦手意識があるのでしょう」と苦笑い。
第42期棋聖戦Bリーグ1組
先番 九段 淡路修三
白番 九段 秋山次郎