上達の指南

秋山次郎九段の「勝負所の決断」

(2)大技に外側止めて対抗

(寄稿連載 2018/02/13読売新聞掲載)

 自分が攻勢に立っているときには、一気に押し切ってしまいたい。しかし、相手も攻められっ放しにはなっていません。反撃のチャンスを虎視眈々(こしたんたん)と狙っています。敵が手筋を繰り出してきても、冷静に対処して主導権を握りたいものです。

 【テーマ図】私が黒番で、右下の白に襲いかかっています。こんなピンチでも、プロはしぶといものです。伊田さんは△と急所につけてきました。ちょっとしたジャブですが、まともに受けてしまうと攻撃の出足を止められてしまいます。

 【参考図】黒1のツギは仕方ないようですが、じつは利かされです。白2と戻って、にんまりされてしまいます。元々黒からはAの押さえが利くのが自慢だったのですが、今からAと押さえても空き三角になっていて、黒1の石が泣いてしまいます。これが△の狙いでした。

 【実戦図1】私は黒1と押さえて反発しました。すると、白2の切りから4、6と逃げて、そこで白8と切る大技が待っていました。

 【実戦図2】しかし、私にも対策がありました。黒1から3とかけついで、外側を止める作戦です。黒11の急所に回って、白12と手を入れさせたのが自慢です。黒13のコスミまで、まあまあのフリカワリです。

 ただし、後から考えれば、黒7のツギでは黒8と伸びるのが厚かったようです。白7の抜きは許しても、黒Aの開きに回って上辺がいい模様になります。

●メモ● 今年は久しぶりに国際棋戦に挑戦する予定。海外の棋士と打つのは、やはり刺激になるという。普段から新しい手は海外から入って来ることが多く、共同研究で布石の進化も早い。進化という意味では、AI(人工知能)の影響も大きい。「しっかり吸収して、もっと上を目指したい」

第42期棋聖戦Bリーグ1組
 先番 九段 秋山次郎
 白番 八段 伊田篤史

【テーマ図】
【実戦図1】
【参考図】
【実戦図2】