上達の指南

安斎伸彰七段の「新研究の有力秘策」

(1)気楽に打てるカタツキ

(寄稿連載 2018/05/30読売新聞掲載)

 今回は、最新の研究から、有力な秘策を四つご紹介しましょう。アマチュア高段者でも全てを知っている方は少ないかもしれません。

 【テーマ図】黒1、5、7は打つ人が多い構えで、「変則ミニ中国流」などと呼ばれています。対して白8と掛かることが多く、白14までのツケ引き定石も一番多く打たれます。さて、黒15と詰め、白16ときた場面です。黒は、上辺に打てば普通ですが、右辺に厳しい狙いがあります。Aの打ち込みもありますが、今回は新しい手を覚えてください。

 【1図】黒1のカタツキは、最近多くのプロが打つかなり有力な手です。白2なら黒7までと閉じ込め、白8、10と1子を取ってくれば、黒11まできれいに分断して黒が大成功です。

 白4で6も、黒7、白A、黒8まで白は一方的にへこまされた上にまだ薄くつらい結果です。

 【2図】1図の白4で白1のハネ出しも、黒10まで右辺の白にはまだ眼がなく、かなり白が苦しい状況。1図の白2のハイは妥協した手に見えて、すぐに苦しくなってしまうのです。

 【3図】そこで、▲に対して白1と押し上げることになります。黒2から4とハネ、8とハネれば白は収拾がつきません。

 【4図】3図の白5では白1とつなぎ、黒2に手堅い白3か白Aと広げる手を選びます。これでいい勝負ですが、白でこう打てる人はなかなかいないでしょう。黒が気楽に打てる狙いなのでぜひお試しください。

●メモ● 安斎伸彰七段は1985年、埼玉県出身。家族は囲碁を打たず、4歳の頃、近所に住む二段のおじいさんに習ったという。めきめき強くなり、紹介されて宋光復九段に弟子入りした。「師匠には子供の汚い字で書いた棋譜を丁寧に添削していただきました。お世話になりました」

【テーマ図】
【1図】
【2図】

【3図】
【4図】