上達の指南

安斎伸彰七段の「新研究の有力秘策」

(3)手抜き対策 ハネを狙う

(寄稿連載 2018/06/13読売新聞掲載)

 これまで定石とされてきた形が見直されるケースがあります。今回は、定石よりもっとよい結果を求めた新しい手をご紹介しましょう。

 【テーマ図】左下のツケ引き定石の手順中、白12に手を抜いて黒13と打ってきました。

 【1図】続いて、白1、3と打つのは新しい研究。さて、何の準備でしょうか。実は白から左下に狙いがあるのです。

 【2図】白1とツケ、白3と当て込み白7までが、この際の定石とされています。もちろんこれでも白は立派なのですが、テーマ図の黒13と手を抜いた割には左下隅の黒も安定し、白が物足りないという考えが最近プロの間であります。

 【3図】そこで、白1から3とハネるのが、1図の準備をした白の狙いです。

 黒4、6の取りは、白9まで振り換わります。白地が大きすぎるため、黒は選べません。

 【4図】3図の黒4では、黒1と当てて、3とつなぐ相場ですが、ここで、左辺に白4と戻る手を用意しておいたのが白の自慢です。白A、黒B、白Cで部分的に黒は眼がない形。黒Dの手入れが必要になるようでは白の利が大きく、プロの実戦なら黒が勝てないほどです。また、左辺の白の形がよく、白4まで白よし。さかのぼって1図の白1とツケた時点で「白持ち」という評価になっています。

 最近は、黒がこの進行を避け、テーマ図の黒13でAに開くなどの工夫がされています。

●メモ● 安斎七段は、1期上の三谷哲也七段と登山を趣味にしていた。「でも、三谷さんはハードすぎるので、僕は軽登山にハマっていきました」と話す。「2017年に標高2017メートルの東京で一番高い雲取山に登るのを目標にしていました」。これを達成して、今は登山からは離れているそうだ。

【テーマ図】
【1図】
【2図】

【3図】
【4図】