上達の指南

青葉かおり四段の「賢いオオカミであれ」

(2)相手を厚みに近寄らせる

(寄稿連載 2015/07/07読売新聞掲載)

 今回は厚みをオオカミに見立てます。「厚みに近寄るな」という格言の意味を、より理解していただければと思います。

 【テーマ図】 左上の黒がオオカミのボスです。今、白が△と飛んだ場面。黒はこのボスにどのように働いてもらうのがよいでしょうか。
 白の立場なら、「近寄るな」という格言は理解しやすいと思います。単独でオオカミのボスに近寄ってもいいことは何もなく、逆に近寄れば近寄るほど、一方的に攻められてひどい目にあいます。
 アマチュアの方は、相手の厚みよりむしろ、自分の厚みに近寄るパターンが多いのですが、黒の立場でもオオカミのボスに近寄ってはいけません。

 【1図】 ボスに近寄った典型的な悪い例です。黒1と地をつけにいき、黒3と左辺にも地をつくりにいきました。でも、たくさんの石を使って少しの地ができただけ。石の効率が悪く、相手が得るものの方が大きくなります。

 【2図】 左上のオオカミのボスの威圧感は、盤上のすみずみまで届いています。
 まず、黒1と右上をしっかり守ります。白2と大場に展開してきたなら、黒3と厳しくいきます。△からボスの方に開かせるのです。相手をどんどんボスに押しやり、怖がらせながら、反対側の右辺や下辺の黒地を広げていくイメージです。これがボスを活用した賢いオオカミの動き方です。

●メモ● 青葉四段は高校在学中にプロ入りを決めた。その後、早稲田大学に進学して囲碁と学業を両立させた。夫は高校の同級生。昨年は新しい女流棋戦「会津中央病院杯」のスタートに携わり、企画力も発揮した。自身の対局でも昨年、女流棋聖戦の挑戦者決定戦まで進出した。

【テーマ図】
【1図】
【2図】