上達の指南
(2)攻めながら、相手を崩す
(寄稿連載 2008/08/11読売新聞掲載) 尊敬する先輩の一人、小川誠子六段との碁です。いつも穏やかで優しい雰囲気からは想像できないような、すごい力の持ち主なんです。強引にやってこられても、なかなかとがめることができません。
【テーマ図】 私の黒番で、黒1はシチョウ当たりです。黒5と打ち込みたかったので、その下準備でした。中央は黒が厚いですから、ここで攻勢に出るべきだと思いました。力の出しどころです。
【1図】 ふつうは、黒1と締まるくらいでしょう。無難ですが、これでは下辺の白を補強されてしまいます。
【2図】 シチョウ当たりというのは、白1と押さえ込んでこられた時のことです。黒2から4と切って6と渡りますが、この時、白8のシチョウが成立しなければ黒が戦えるはずです。白7のカケくらいですから、黒8から10と曲げて12と押せば、白数子を飲み込んで、黒がやれると思っていました。
【3図】 実戦は、白1と飛んで安全策を取ってきました。これには、黒2の出から6と戻っておきます。白は7から9とハネて、左辺の白と連絡を図ります。途中、黒14のツケがぴったりで、気持ちのいいところです。黒16の大きな締まりに回って、形勢が好転しました。攻めながら相手の形を崩して得をする、理想的な展開でした。
●メモ● 青木八段は、小学6年で第1回少年少女大会4位入賞。同じ緑星学園の後輩、山下敬吾棋聖は小学2年で優勝している。2005年、入段から19年2か月で、通算400勝達成。37歳0か月での達成は女流棋士で史上最年少。達成時勝率0.564は女流史上1位。