上達の指南

青木喜久代女流棋聖の「若手女流ここが強い」

(2)強手の攻めから戦いに

(寄稿連載 2012/07/10読売新聞掲載)

 向井千瑛(ちあき)五段は向井三姉妹の末妹で、メキメキ力を付けています。手が見える力強い碁で、攻める石を与えてしまうと大変です。極端な言い方をすると、スキあらば石を取ってしまおう、という迫力があります。
 謝依旻(しぇいいみん)さんを追う一番手ですが、ライバル意識が強すぎてか、タイトル戦では実力が発揮できないでいます。きっかけをつかめば、謝さんを脅かす存在となるでしょう。
 碁は豪快ですが、普段は大人しい、かわいらしい女の子です。

 【局面図】 右辺、黒9の肩ツキから17まで圧迫するのがはやっていた頃です。
 白20と開いたのですが、次の一手に驚かされました。

 【実戦図】 なんと黒1と打ち込んできたのです。白2と二間に開いてじっくりいくつもりでしたが、黒3のコスミ以下7、9と攻められ、彼女の得意とする戦いに引き込まれました。
 私も意地になって白16、18と切断し、黒21と伸び切られ大乱戦に。千瑛さん相手に戦うとひどい目にあう一例でした。

 【参考図1】 黒1と隅にかかるのは予想していました。白2以下6となれば、Aの三々もあって、黒もちょっと怖いと思っていたのです。

 【参考図2】 冷静に振り返ると、実戦図の白2では、白1の方がよかったようです。黒2なら白3、5でよいですし、黒2でAの締まりなら白Bで戦いは回避できました。

●メモ● 青木女流棋聖には、2人の娘さんがいる。女流棋聖戦の挑戦者に決まった頃と、長女・美樹さんの中学受験が重なり、二人三脚で頑張り、励まし合った。幸い美樹さんは第一志望校に合格し、青木女流棋聖も6年ぶりのタイトル獲得。共に「サクラサク」結果となった。

第21期女流名人戦
白 八段 青木喜久代
黒 五段 向井千瑛
(2008年)

【局面図】
【実戦図】
【参考図1】
【参考図2】