上達の指南

青木喜久代女流棋聖の「若手女流ここが強い」

(4)すごい迫力で初名誉称号

(寄稿連載 2012/07/24読売新聞掲載)

 謝依旻(しぇいいみん)さんは、女流本因坊と女流名人を共に5連覇して女流初の「名誉」称号を獲得しました。22歳の若さで、どこまで強くなるかファンの方々も注目されているでしょう。しかし謝さんの独り勝ちでは面白くなく、私たちも頑張って女流碁界を盛り上げていきたいと思っています。
 謝さんの碁はすごい迫力で、少し悪くなってからの力の出し方は半端ではありません。
 中国遠征で同行する機会も多いですが、中国語は通訳してくれますし、若い中国選手とも仲良く交流し、物に動じない頼もしい存在です。

 【局面図】 今年の女流棋聖戦挑戦手合第3局です。立ち上がり左上隅で謝さんがやや損をし、黒が面白い形勢で黒55と構えたところです。

 【実戦図1】 白1のカカリから白3と打ち込んで来られたのには驚きました。乱戦を求める謝さんらしい果敢さですが、黒4以下裂かれて12まで2子を飲み込まれては白が更に苦しくしました。

 【参考図】 ここは白1と飛び、黒2に白3以下7と振り替わるくらいが相場でしょう。

 【実戦図2】 この後、黒が潰し損ない、難しい中盤戦です。予想どおり謝さんは、白1とすごい迫力で大石の眼を奪いに来ました。この折衝で双方にミスが出て、白17でA、黒Bの交換をされていたら形勢不明でした。幸いしのぎ切り、何とか謝さんの三冠にストップを掛けることができました。
(おわり)

●メモ● 青木女流棋聖は、今年に入って超多忙。女流棋聖戦挑戦手合の後、2回の中国遠征をこなし、帰国した翌日には長野県での「アルプス囲碁村まつり」でファンと交流。主婦業もこなす。「忙しくて勉強も思うようにできない時の方が、かえって対局に集中でき成績もよいようです」

第15期女流棋聖戦三番勝負第3局
白 女流棋聖 謝依旻
黒 八段 青木喜久代
(2012年)

【局面図】白38(35)
【実戦図1】
【参考図】
【実戦図2】