上達の指南
(1)難解な手 真似せず普通に
(寄稿連載 2019/1/9読売新聞掲載)プロの世界では今、AI(人工知能)旋風が吹き荒れています。
確かにAIの着手には唸(うな)らされることばかりですから、それをプロが取り入れ、自身の碁を向上させようとする傾向に、異論を挟む余地はありません。
しかし、一般のアマチュアの方たちまでが「プロの間で流行しているから」といった理由でAI発の手段を真似(まね)することには、首を傾(かし)げてしまいます。非常に難解な変化を含んだ手段を平然と打ち、その後で当然のように失敗して形勢を悪化させてしまう光景を、最近は頻繁に目にするようになりました。
そんな難しい手を打たなくても、以前からある普通の手で充分――私が自分の教室の生徒さんに話している、そうした具体例を、これから4回にわたって紹介していこうと思います。
【テーマ図】黒1の三々に対し、白4と外して黒11までが最近の流行。こののち白イとこすんで超難解な戦いに突入していくのですが、アマチュアの方々の手に余る進行でしょう。
【1図】白1、3とハネ伸びていて、特に悪いというわけではないのです。白7ののち黒8の大場を占められ「隅で地を稼がれた上に黒8も打たれては甘い」という評価は、あくまでプロレベルでの話なのです。
【2図】白1、3から5と左下での攻めに回り、白が悪いとは思えません。アマチュアの方にとってはむしろ「主導権を握った白ペース」とさえ言えるのではないでしょうか。
●メモ● 有村比呂司八段は宮崎県日向市出身の46歳。安藤武夫七段門下で、1988年入段。棋聖戦で二段戦と三段戦の優勝実績がある。日本棋院にてジュニア囲碁スクールの講師を務め、自身でも囲碁教室を主宰。ソフトな語り口と明快な理論、そして情熱的な指導により、生徒たちからの信頼が厚い。