上達の指南

有村比呂司八段の「脱AI簡明戦法」

(2)着手の意味 きちんと理解

(寄稿連載 2019/1/16読売新聞掲載)

 定石を覚えて2目弱くなり、という川柳があります。

 碁を知識や記憶で打つことの弊害を戒める意味で引用されることが多いのですが、アマチュアの方が着手の意味を理解することなく、AIの真似をするのは、まさにこの川柳そのものと言っていいでしょう。

 アマチュアの皆さんには、自分できちんと意味をつかめている手を打ち、碁を楽しんでいただきたいと思うのです。

 【テーマ図】黒1、白2に続いて、黒3のツケから5とはねる手が全盛です。従来から「場合の手」として打たれていましたが、AIの影響で、現在はこちらが主流となりました。

 【1図】白1、3の当てツギから5と下がり、黒6の押し上げまでが流行定石。この進行にはもちろんケチをつける余地などないのですが……。

 【2図】黒1のスベリが悪いと結論づけられたわけではないのに、プロの碁ではすっかり見かけなくなってしまいました。

 ただし、理由が皆無というわけではなく――、

 【3図】白1と挟まれ、白9までの分かれが「黒不満」と結論づけられたのです。

 しかし黒2では――、

 【4図】黒1、3につけ引く一手だというのが故・呉清源九段の主張でした。白からの封鎖を防ぎつつ、黒Aの切りとBの三々を見合いにします。

 確かにこれで黒が悪いとは思えず、ゆえに▲のスベリが廃れる理由はないと思うのです。

●メモ● プロの間ではAI発の手段が全盛であるが、有村八段いわく「正直なところ、従来の手とAIの手にどれくらいの差があるのか、この問いにきちんと答えられる棋士はひと握りしかいないはずです」とのこと。プロも人間、結果を出している人(モノ?)が打つ手を真似したくなるようだ。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】
【4図】