上達の指南

有村比呂司八段の「脱AI簡明戦法」

(4)一間高バサミ有力な手

(寄稿連載 2019/1/30読売新聞掲載)

 最終回は、私のお奨め手段を紹介します。AIの評価は低いのですが、私には悪いと思えず、相手がそのように打ってくれるのなら、喜んで何度でも使いたいと思っているのです。

 【テーマ図】白1のカカリに対する、黒2の一間高バサミがその一手。プロの手合ではほとんど打たれていませんが、私は有力だと思っています。

 【1図】黒1の二間高をはじめA、B、Cなどの緩いハサミだと「白2と掛けられて今ひとつ」が現在の定説。黒3、5と受けるのでは利かされとの考えで、ゆえに最近は黒1で、2や4と受けが多くなっています。

 それでも私は、テーマ図・黒2の一間高バサミを強く推奨させていただきます。

 【2図】白1のカケには黒2、4と出切って8まで。白の姿を重くして、これは明らかに黒が有利です。

 【3図】AIは「白1の飛びから3、5、7と押し、9と挟んで有利」との評価で、ゆえに一間高バサミが打たれないのですが、私はこれに賛同できません。黒4から8と四線を伸びることができれば、悪いわけがないと思うのです。
下辺でこの規模の地を得ることができれば不満なく、黒10と挟み返して▲を軽く見る――充分に黒が打てると確信します。

 【4図】テーマ図の白3で、4図の白1以下の従来定石なら黒8まで、これも不満のない進行です。

(おわり)

●メモ● つい数年前までは「五線を押して四線を伸びさせるなど、碁の法にない」とされていた。しかしAIが平然と(?)五線を押し、結果を出したことで、常識が覆った感がある。今や若手棋士は、それこそ平然と五線を押して勝ちまくっている。「僕は古い人間なのでしょうね」と有村八段。

【テーマ図】
【1図】
【2図】

【3図】
【4図】