上達の指南

有村比呂司八段の「脱AI簡明戦法」

(3)中国流 アマ初段に推奨

(寄稿連載 2019/1/23読売新聞掲載)

 昭和の時代から中国流は、模様と実利のバランスが良いということで、プロにもアマにも愛用され続けてきました。

 しかしAI(人工知能)の登場以降、この中国流の人気が凋落(ちょうらく)しています。今回はその理由の周辺についてお話ししてみたいと思います。

 【テーマ図】▲の中国流から黒1、3の展開は、かつて「両翼を広げた理想的な構え」と言われてきたのですが、AIが白4のツケを示し、結果を出し続けたことで、今や中国流そのものが打たれなくなってきてしまったのです。

 【1図】黒の対応は1の引きが最善とされ、白2から8までが定石化されていますが、白の姿が軽く「黒が今ひとつ」という見解が定着しています。

 【2図】黒1と隅からはねるのは白2と押さえられ、黒3から白8までとなりますが、▲が右下と重複して凝り形で、白に万全の治まり形を与えてしまったので、やはり黒が割を食っているとの定説です。

 プロレベルで言えば、確かにそのとおりと言わざるをえません。しかし、ことアマ初段前後の方々に限って言えば、どうでしょうか? 私は自分の教室の生徒さんたちに、この2図を推奨しておりまして――。

 【3図】黒1から9と運んでくださいと話しています。右辺と下辺で確定地を得たことは何よりも心強く、むしろ黒が打ちやすいとさえ言えるのではないでしょうか。

●メモ● 現在、プロの手合で中国流は激減しているが、有村八段は「アマの皆さんに関しては、やっぱり有力な布石だと思います」と語っている。AIの評価値が低いことがプロ間での衰退の大きな理由だが、「コミにしたら2、3目の差でしかありません。主導権を握れることが何よりの魅力です」。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】