上達の指南

淡路修三九段の「アマに学ぶ戦いの呼吸」

(1)アマの捨て石…

(寄稿連載 2005/02/14読売新聞掲載)

◆アマの捨て石、取られた石

 私は約八年間にわたって、「淡路塾」というアマチュアの教室を主宰しています。生徒数約百人、毎週火曜日ですから教材づくりも含めると、結構忙しいです。
 しかしアマの方は考え方が盤面にもろに出ますから楽しいですし、参考になることもあります。
 今週から四回にわたって、淡路塾で打たれたアマ実戦譜を題材に、戦いの呼吸を勉強していただきます。

 【テーマ図】 黒番のOさんは、筋や形にこだわるタイプで、アマ六段の棋力です。
 白4のハサミに黒5と寄せたのは工夫の手ですが、白8と急所に迫ったのがなかなかの強打で黒弱りました。

 【1図】 従ってテーマ図黒5では、1と軽く飛んで、黒3と運んでいる方が普通で、これで黒は十分でしょう。  白8に黒9と飛んだとき、白10とつけ越されて黒は少々慌てました。黒11とかわしたのは、頭を下げた手で面白くありません。

 【2図】 白10を嫌えば黒1から3なら堅いですが、白2と強化し黒自身の動きが重くあまり感心しません。

 【3図】 黒11とかわした手では、黒1とはねて真正面から対決すべきでした。白2の切りなら黒3、5とポン抜き、黒Aの出と黒Bを見合いにするべきでした。また、白2で3と引けば、黒2、白C、黒Aと振り替わってお互いにやれそうです。

 ところで、黒11に白12の出以下白16まで黒は5、9の二子がほぼ死に石となりましたが、これは捨て石でしょうか?
 私は塾で、「打った石は大事にしなさい」と言い、捨て石は禁句にしています。アマの「捨て石」というのは、実はおおむね「取られた石」というケースが多いのです。

●メモ● 淡路九段は1949年8月、東京都生まれ。 68年入段、84年九段。名人、本因坊、天元、碁聖挑戦各1回。第25期棋聖戦挑戦者決定戦出場。棋聖戦リーグ4期、名人戦リーグ8期、本因坊戦リーグ5期。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】