上達の指南

淡路修三九段の「アマに学ぶ戦いの呼吸」

(2)利き筋はタイミング大事

(寄稿連載 2005/02/21読売新聞掲載)

◆中庸の感覚が勝利への道

 「淡路塾」で、私は常に「碁は勝ちに行くゲームではなく、減点ゲーム」と教えています。つまりマイナス(減点)手を少しでも減らすよう心掛けるのが勝利への近道と言っています。

 【テーマ図】 白番のAさんは、かわすことが苦手で、まともにケンカを買って出るタイプです。
▲のカケまで双方立派な碁で、満点をあげようと思った瞬間、白1のカケ。黒イと受けさせて白ロと伸び、黒ハに白ニで一気に優位に立とうという狙いですが、さすがに黒は怒って2と押しました。白もケンカを買って出て3と押さえましたが、黒4と切られて苦境に立たされました。

 【1図】 テーマ図白1では1と二間に飛ぶのが穏やかな手です。黒2に白3、5と運べば、ミニ武宮流といった感じで、白は十分対抗できます。

 【2図】 また白3では1と飛んで軽くかわす感覚がほしいです。黒2に白3から5とつぐことになれば白は厚みを得て十分です。

 【3図】 白はテーマ図の5以下9まで力ずくで押しましたが、白5でも柔軟な発想が必要でした。同じ戦うなら白1と引き、黒2から4、6と形を整えたとき、白7と黒をはさみつつ下辺で所帯を持ちます。  白としては左辺に模様を築いた手前、これに固執したのでしょう。確かに趣旨の一貫は大事ですが、しくじったときには3図のような変化する考え方も必要です。

 アマの方は、一刻も早く優位に立とうとして欲張り、または無理手を打ちがちです。もっと相場観、中庸の感覚を養ってほしいものです。

【テーマ図】
【1図】
【2図】
【3図】