上達の指南
(2)力ため攻めを狙うツギ
(寄稿連載 2012/10/30読売新聞掲載) ひと昔前は当然とされた進行も、新しい形が出現すると、ぱったりと打たれなくなります。流行というものでしょうか。
【1図】 白8のスベリに黒9とつける例の定石です。白12のツギが新型。それまではイの押しと決まったものでした。ツギは力をため、三々に回れば満足、場合によっては挟んで攻めようという狙いです。イの押しは中央が厚い。新型との善悪ははっきりしませんが、いまでは押しでいく人はあまりいません。
【2図】 その後の進行です。白に三々を許すわけにはいかないので黒2は絶対。そこで白3の押しですが、黒4の一間飛びが軽い。
右下は黒が構えているので、黒8と押し上げるのが肝要。2子は進呈します。白11の下がりに黒イと欲張ると、白ロで攻め合い負けに。
【3図】 右辺の切りを打たずに白9と走ったケース。右辺はそれほど急がないという判断です。黒は10とついで反発。中央の戦いとなります。
【4図】 黒3の押しに白4とはねて変化した実戦もあります。勢い黒5、7となり、白は隅の地を取り、黒は外勢を厚くする分かれに。白地が大きそうに見えますが、これは黒の外勢に軍配があがります。
【5図】 最新型です。白3を利かせてから、5と挟みます。▲の2子を攻めて主導権を握ろうという作戦です。右辺の黒を封じ込め、中央経営を目指します。これは白を持ちたい。
●メモ● 円田九段は東日本大震災の後、仙台市を4回訪ね、ボランティア団体「碁ランティア」とともに子ども教室を開催している。震災後、棋士として何か役割を果たしたいと思っていた時、碁ランティアのメンバーと知り合った。「子どもたちの笑顔が何よりの励み」。今後も続けていくという。