上達の指南
(3)常識にとらわれない工夫
(寄稿連載 2012/11/06読売新聞掲載) ツケにははねよ、ハネには伸びよ――。基本格言ですね。その通りです。十中八九、この格言通りに打って悪くなることはない。しかし最近の工夫は常識にとらわれません。
【1図】 右上に注目してください。黒1の星に、白6、8と両ガカリしました。黒9のツケに白19とはねれば、毎度のハネ伸び定石です。
ところが白は10といきなり三々です。ハネ伸び定石では三々の後、黒11と押さえられ、はねた石が制せられることになります。それなら、ない方がいいではないか、というのがこの工夫です。
白12の後、黒13と大場へ向かいました。そうすると白18の伸びが焦点となります。黒21の押さえの後、白22のノゾキが調子。イは利かされで打ちにくい。この場合は黒23と下がりましたが、ロと押し上げるのもあります。
【2図】 この実戦例では右下で現れました。黒23とひとつ余計に伸びたのが珍しい。黒は趙治勲二十五世本因坊。地に辛い棋風の出た手と言えるでしょう。確かに地は得をしていますが、1図にあったノゾキをなくしており、味気ない感じもします。白26とがっちり押さえて、私は白を持ちたい。
【3図】 白8と高く挟んだケースです。黒13はイと低く挟むのもある。いまがタイミングで、後では利いてもらえない可能性もあります。白14はロと一間に飛び、黒ハと1子を制する進行も。これは戦いになります。
●メモ● 円田九段は大阪市北区で囲碁カフェバー「estrela(エストレラ)」((電)06・7173・1353)を開いて3年になる。店の名前はポルトガル語で星の意味。碁盤も備えており、一杯やりながら碁を打つお客さんも多いという。カウンター越しに指導することも。