上達の指南
(4)一路の違いで多様な変化
(寄稿連載 2012/11/13読売新聞掲載) 最近の実戦の工夫は日進月歩です。新しい定石を楽しむと共に、チャンスがあれば自分でも試し、碁敵をびっくりさせてみてはいかがでしょう。
【1図】 黒11のツケが新工夫。よく見る手のようですが、それは黒7がイと低く挟んでいる場合。白ロの割り込みか、ハの押さえなら普通です。ところが高くかかった時でもつけるケースが増えているのです。一路の違いが多様な変化を生みます。
【2図】 ▲が13と低いハサミの時の分かれに似ています。黒12の後、白は本当はイと押さえたい。しかしそれでは▲に活力が残る。それで白13と遠慮したのです。そこに黒の満足があります。
【3図】 それで白2と押さえる実戦もあります。黒は、9のツギまで隅でしっかり地を持ちました。白はイと押さえ込むのが普通ですが、黒が収まっているところなので、封鎖の価値は低いとして10と開きました。
【4図】 白2と素直にぶつかった実戦。黒3のカケツギはしっかりしているようですが、下辺からいろいろな利き味を見られており、はっきり生きているとは言えない。黒3ではイ、白ロ、黒ハ、白4と確実に生きておいた方がよかったと思います。
【5図】 左辺のハサミがない例です。▲を大事にしたい、と黒3とこすみました。白は4と盤上最大の左下の締まりへ。この辺りはプロならではの駆け引きです。
(おわり)
●メモ● 円田九段が最近、はまっているのが村上春樹の小説。「1Q84」が話題になり初めて手に取った。自分と同じ年代が舞台となっていることから、「共感しながら読んでいる」という。「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」「1973年のピンボール」なども読了。